世紀末とも島の最果てとも兵庫一アクセスの悪いブルワリーとも言われる弊社醸造所ですが、天候の影響も受けやすい上に集落には住民も数人しかおらず何かとインフラ面が弱いです。
予告なしの断水があったり、道路が水没したり、停電も3ヶ月に1回くらいします⚡🌪️⛈️🌋
水没した醸造所前の道↓
そう、停電。断水や水没と違って停電は大抵遅くても数時間で復旧します。復旧すれば大抵の機械は何事もなかったかのように動きます。
しかし、不凍液を冷やすチラーは電源を入れなければ再稼働しません。チラーによって-3℃に冷えた不凍液によってタンクの温度を冷やして美味しく発酵・熟成されるわけです🍺タンクの温度が設定温度を外れたら自動的に電磁弁が開いて不凍液が循環して温度を上げないようにしてくます。仮に夜中に停電しても次の日の朝にはチラーの電源を入れられるので温度が上がることはほぼありません。
時はさかのぼり、2024年の5月30日~6月1日で東京はKITTE丸の内にて、南あわじ市のポップアップストア『だから行きたい南あわじ市』に出ておりました。羽田空港から徳島空港へ飛んで、そこからバスに乗って計2時間で南あわじへ来れることをPRするイベントでした。学生時代を東京で過ごした私は多くの友人に遊びに来てもらって、ビールも連日売り切れて、夜は一緒に店頭対応したナミノオトブルーイングさんと飲み歩いて…それはそれは楽しくて有意義な3日間でした。
まさかその間に停電が起きているなんて…チラーが停まっているなんて…。晴れの日が続いて不凍液が入っている容器も暖まり、不凍液もかなりの高温に。停電が復旧するとシステムやポンプ等他の設備は復旧します。発酵タンク内の温度が設定温度より上がっているので、システムが温度を下げようと不凍液を循環させて…すべてのビールがお風呂のように熱くなっていました。
前より美味しく作れた定番品も、新作も2,000リットル超をダメにしてしまいました。醸造所の床で崩れ落ちて泣きながらしばらく天井を見つめていました。
原料たちへの申し訳無さと夏を乗り切れるかの不安でタチナオールのに時間がかかりましたが、そんなときのためのビール。「ビール腐らせても心は腐らせるな!今の私にぴったりなビールを作っていこう。大変な世の中生きている皆様にもきっと合うビールになることだろう。」そんな思いを込めてなんとか再始動。税務署に相談して腐敗したビールを廃棄。インスタで当面の間タップルームを休業することを報告。注文にはすでに樽詰めしている在庫を出荷しながら場合によってはお断りすることに。
そして一番有難かったのが皆様の支え!インスタを見てくれた皆様からのお見舞いのメッセージやブルワー仲間からの支援物資(野菜やビール!本当に助かりました!)が送られてきたり。資金援助を申し出てくれたお得意先様やタップルームで売上の足しにと樽生の提供をご提案してくれたブルワリーもいました(いずれもお断りしました。気持ちだけで立ち直れます!)。大家さんも家賃の支払いを待ってくれるという温情。
皆様の優しさビールが腐ったとき以上に涙を流したかもしれません。お陰様で元気に仕込みをすることができました。本当にありがとうございました。
ブルワーになってこんなに打ちひしがれたこともなかったですが、こんなにブルワーになってよかったと思えたこともありません!
一歩踏み出すことができるなら、もう一歩も踏み出せる。クライマー トッド・スキナーさんの山の格言です。皆様のお陰で立ち上がって一歩を踏み出せました🙇♂️
廃棄後に立て続けに仕込みをしてきましたが、ビールを作れる状況に感謝して今まで以上に気持ちを込めてビールを作れています。失ったもの以上に得たものが大きい停電でした。独立早々ド派手に転んでよかった!もういっぺんやったら本当の終わりです。
次は弊社が皆様の次の一歩を後押しできるように頑張ります。そのためのビールです🍻
皆様も時には停電して南あわじで充電していってください!
Comments